がちゃこん!

スタートはいつもここから。

Z H2 SE インプレ(後半)

<country road>

緊張の初乗り、回転縛りの慣らし運転で高速2時間走った割りに走り足りない気分なので、いつも降りるICの二つ手前で下道へ。

この「走り足りない」と思わせるのはストリートバイクとして真っ当な素養を持っている証拠。幹線道路を避けて車が少ないクネクネ山道を走ると240kg有るとは思えないヒラヒラした身のこなし。190/55という尖がったリアタイヤが効いてる模様。家に近づくにつれ走り慣れた道が増えてきますがなんとなく違和感。いつもより道が広く感じる?それくらい自由自在に操れる気分になります。これも電サスの威力?いや多分それだけではなく電スロやトレリスフレームなどの総合力が高いのだと思います。

<super charger>

非常にポジティブな印象なので乗るのが楽しく、ぐいぐい距離が伸びてあっという間に慣らし完了。見せてもらおうかスーパーチャージャーの性能とやらを。とりあえず人気の無い道でアクセルをグイッと・・・あ、コレやばいやつだ。海外のテストライダーが「腕が千切れる」って書いてたけどまんざら嘘でもないわ。慌ててアクセル戻すとフロントタイヤがトンッと着地。一瞬でフロント浮いてたらしい。完全にビビリが入ったのでジワーっと開けるとジワーッと加速するんですがブーストが掛かる5000回転あたりからギュルギュルと力が漲って来て、そこから先は009の加速装置のように、ナッパを仕留める悟空のように、スパイラルブーストを作動させたアスラーダのように爆発的な加速をします。マジでアニメでみたアレやコレを実体験してるかのよう。でもアニメじゃない、本当のことさ。

<sky hook>

スーパーチャージャーに並んで購入動機となった電子制御サスペンションのスカイフック制御。正直ただの電サスなら要らないと思ってたのですが、これがあるなら話は別。以前から是非体験してみたいと思ってました。日本の雑誌では「宙から吊るした様な乗り心地」とか、なんだか良く分からない書き方してますがライターが良く分かってないんだろうなきっと。まあ僕も良く分かってませんが。宙吊りにしたバイクの車体にバネの入ってないサスを付けて走らせればタイヤだけが路面の凹凸を舐めるように上下して車体の水平は保たれる、この状態を再現しようというのがスカイフック理論です。完璧に再現しようと思ったら動力で伸び縮みする完全なアクティブサスペンションが必要ですが、現在の技術ではバイクの小さな車体にそこまでの機構は組み込めないので電子制御の演算で擬似的に再現しようとしたのがSEに採用されたスカイフック制御。実際に使用してみるとさすがに車体が上下しない!とはなりませんが、大型バイクとは思えないエストレヤ並みの柔らかい乗り心地でありながらブレーキかけてもアクセル開けても大きなピッチングを出さず好印象。ただし速度が上がるとちょっと制御が追いつかず高速道路の継ぎ目などでフワンフワンする時があるので70km/h以上で走るならスカイフック制御が入るRAINモードではなくROADモードかRACEモードの方が良いです。RAINじゃなくても極端に乗り心地悪くなりませんし。RAINモードは馬力も半分の100馬力に抑えてトラコンも最強になるので、その名のとおり雨の日に使うと安心して走れそう。

<overall review>

今年でバイク乗り始めて30年。原付、2st125ccから4st1400cc、1,2,3,4気筒、ホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハと一通り経験したのでこれまで乗ったことの無いメカニズムに乗ってみたいと思いスーパーチャージャー付きのZ H2 SEを選択しましたが(他は6気筒縦型エンジンにテレスコピックではないサスペンションのゴールドウィングも考えたけど1400GTRの次としてはちょっとキャラクターがかぶるかなと)全く期待通り、いや期待以上のバイクでした。市販車最強クラスの強烈な加速力がありながら街中をノロノロ走るのも苦にならない従順さも兼ね備えたエンジン、200馬力を受け止めながらも硬さや手強さを感じさせない車体、常に手応えに余裕を残しつつ狙ったラインをトレースするハンドリング、それらを実現する諸々の電子制御など、この30年分の技術の進歩を存分に味わわせてくれます。内燃機関の終わりが見えてきた今の時代、手に入れて後悔の無い1台だと思います。